東京大学総合研究博物館
標本資料報告 第92号

東京大学総合研究博物館 人類先史部門所蔵
荻堂貝塚出土器・石器標本

石井龍太・佐宗亜衣子・諏訪 元

はじめに

東京大学総合研究博物館に収蔵されている沖縄関係の考古資料については、1990年代に、安里嗣淳氏らのご尽力により、主要な資料群について写真一覧が出版された。特に、鳥居龍蔵、松村瞭らの明治・大正期の調査と関連した多くの資料について保存状態が確認され、同時に、若干の資料群間の混乱も認識された。また、荻堂貝塚の土器資料については、大正期以来の収蔵の変遷により、かつて接合してあった土器個体の多くが個別の破片となっており、そのまま報告された。

本標本資料報告は、石井龍太(当時、本学考古学研究室博士課程)の提案により、荻堂貝塚の土器と石器資料について、安里嗣淳氏ら(1994, 1996, 1997)の成果に立脚し、松村瞭らの記録と再対比しながら、荻堂貝塚資料の現存状態を記録し、後世に継承するものである。この過程で、土器個体の復元を再現し、新たな接合をも若干数加えた。

当館人類先史部門収蔵の荻堂貝塚資料には、松村(1920a)掲載の土器、石器のほか、貝器、骨角器、動物遺体が見られるが、今回の標本資料報告は土器・石器資料だけに限るものである。本標本資料報告作成のための資料整理と調査は、今村啓爾教授(当時、東京大学文学部)の指導のもと、2006年から2009年の間に石井龍太によって行われた。作業は整理、確認、記録ならびに復元からなり、接合、実測、拓本とも石井によるものである。標本資料報告の作成補助には野口和己子と稲葉佳代子があたり、写真撮影は上野則宏氏が行った。ここに、関係各位に厚く御礼申し上げる。

2012年1月

諏訪 元(東京大学総合研究博物館)

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