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亘理俊次 芝棟コレクション
このコレクションは、植物学者であると同時に高名な植物写真家でもあった亘理俊次博士(1906-1993)によって、植物民俗学研究のために主に1960年代から1990年にかけて行われた芝棟調査の記録です。
「芝棟」とは、茅葺き屋根の棟に芝土をおいて棟の固めとしたもので、「くれぐし」とも呼ばれます。芝土に生い茂る植物が根を張ることで棟を固定し風雨への抗力を高める棟仕舞の一手法で、かつては広く行われていたと推察されますが、1960年代以降、茅葺き屋根の消失とともに急速に姿を消しました。
コレクションは、主に博士によって撮影された写真と、芝棟踏査時の聞き取り記録・分布地図、ならびに著書『芝棟‐屋根の花園を訪ねて』(八坂書房、1991)のために起こされた草稿・原稿類(未公開)から成ります。
博士の調査によって、棟の芝土には乾燥に強く根張りのよいイワヒバやイチハツ、ヤブカンゾウ、ニラ、アヤメなどを意図的に植え込んだことが明らかとなりました。ここに収められた写真は、自然と調和し、さながら「屋根の花園」の趣を呈する芝棟の姿を眼前に現す、植物民俗学・建築学上貴重な資料です。同時に、収集・記録された古老たちの証言は、民家研究のみならず、昭和時代後半の世相史を探る上で重要な資料となるでしょう。
本コレクションは、ご遺族により本館にご寄贈いただきました。ここに感謝の意を表すとともに、博士の遺志のもと広く一般に公開し、植物民俗学・建築学・民家研究等の資料として活用されることを期します。
(注)現在写真データのみを公開しています。