森林植物データベース

Data Base on Forest Botany Section

森林植物部門では、森林における生命活動を研究対象として、これらに関連する学術資料の調査・収集を行っている。これらの資料の中で、とくに、学術的価値が高いと思われるのは、農学部森林植物学講座初代担任であった猪熊泰三教授が採集した第二次世界大戦前の樺太演習林や台湾演習林の木本植物標本や、パプアニューギニアにおける採集標本など約6万点の資料であり、これらの中にはタイプ標本など数多くの貴重な樹木標本が含まれている。

樹木のさく葉標本は、総合研究博物館内の植物・森林植物標本室に数万点所蔵されているが、針葉樹および笹竹類や樹木・草本の一部の外国産さく葉標本は農学部にも所蔵されており、その数は約6千点に上る(うちタイプ標本は40点)。中でもE.H.Wilsonの収集品を中心とする700点余りの中国産樹木標本は、精密な分類・同定が必要とされる場合に原記載標本を知る上で非常に貴重な標本である。なお、わが国の主要な樹木については、倉田 悟教授による「原色日本林業樹木図鑑」(全5巻)(1964年〜1976年)にとりまとめられている。

一方、農学部森林植物学研究室で所蔵する約8万点の標本には、倉田悟教授が収集したシダ植物の4万点を超える標本群がある。そして、倉田教授自身の命名した新種の基準標本(タイプ標本328点、ホロタイプ標本183点)などを数多く含む。

また、木材解剖学研究に欠かすことができない木材標本と材鑑2万点、プレパラート2万枚は、精力的に日本や東南アジアの木材の解剖学的な観察を行って収集したもので、木材を識別するための基礎的研究の成果である。これらの木材標本やプレパラートは、東京大学が世界に誇り得る標本群である。

森林植物部門の標本群は、おもにさく葉(押し葉)標本、針葉樹の球果などの液浸標本や乾燥標本、木材標本(材鑑)、木材プレパラート、キノコの乾燥標本などからなり、国際的なハーバリウムとしてTOFOという略号で知られている。これらTOFO標本群の実際の所蔵場所としては、総合研究博物館内の植物・森林植物標本室に樹木さく葉標本の大部分が所蔵されているが、この他にも農学部標本室に樹木のさく葉標本の一部と材鑑の全部が、農学部森林植物標本室にシダ類のさく葉標本と木材プレパラートが所蔵されている。標本は分類学的な順序に整理されているが、所蔵場所が分散されているので、これらの標本群を網羅するデータベースが構築されていて、標本の検索を容易にしている。森林植物部門がこれまでにデータベース化を終えた標本は、シダのさく葉標本と木材プレパラート標本で、ともにExcelファイルに収められている。データベースの内容は、標本室の標本棚の位置、標本棚の中での標本の位置、標本ラベル記載の学名および注記、同一種の標本枚数、和名、採取場所、タイプ標本の表示、タイプ標本である場合にはその命名記載がおこなわれた文献などからなっている。また、木材プレパラートについては、顕微鏡写真撮影が行われている。

森林植物学研究室所蔵のシダ標本約4万点は、農学部1号館地下1階30番標本室に一括して収められている。シダ標本棚は30番標本室の半分のスペースを占め、上下に2つの標本棚を並べた一列の標本棚(W1〜W6、W11〜W17)からなる(図1)。横長の標本棚は、まず垂直の仕切りで横に3つに仕切られ、さらに縦に8つに仕切られている(図2)。標本の位置は【標本棚の列番号】W1〜W17、【標本棚の上下】U(upper)またはL(lower)、【標本棚内の左右の位置】L(left)、C(center)、R(right)、【標本棚内の上下の位置】1〜8で、最小単位の棚(以下、小棚)の位置が示されている。小棚内に複数の標本群が収められている場合には、上から順に通し番号が付けられている。これらを順番に表記した収納位置番号は、例えば W13U-L5-2と記載され、この標本は、標本棚(W13)列の上の棚(U)にあり、左側の上から5番目の小棚(-L5)の、上から2番目(-2)に置かれている、ということが分かる仕組みになっている。

シダ標本はおおむね種ごとにまとめられているが、一つの種が多い場合には地域別に分け、また変種・品種がまとまってある場合は変種・品種レベルで独立してまとめ、逆に一つの属の種数が少ない場合は同属別種でまとめている。いずれにしても、ひとまとまりの標本を厚紙ではさみ、その分類群の種名や属名などが厚紙の表面に記されている。これらの標本は科・属レベルで同じものはまとめられ、科レベルでは若干前後の移動はあるものの分類順に並べられ、属・種レベルや種以下のレベルでは概ねABC順に並んで標本棚に収められている。

シダ標本のデータは、「検索表」、「標本リスト」、「シダタイプ標本リスト」という3つのファイルからなっている。

「検索表」は、所蔵棚別に収納されているシダの科名が記され、一つの科が複数の標本棚にまたがる場合には、棚別に収納されている属名を示してある。探し当てる標本の分類学的な位置づけが分かっている場合には、どの棚にそれが保管されているか即座に知ることができる。

「標本リスト」は、命名・分類済のシダ標本の全リストで、厚紙にはさまれた一まとまりを収納場所順に示し、一まとまりごとに【収納位置番号】、【厚紙記載項目】、【和名】、【科名】、【さく葉標本数】、【採取地域】、【収納タイプ標本番号】の各項目が記録され、シダ標本の具体的な内容が分かるようになっている。「シダタイプ標本リスト」(表1)は、すべてのシダ標本からタイプ標本のみをピックアップしたもので、各タイプ標本について【タイプ標本番号(収納場所順につけたタイプ標本の通し番号)】、【収納位置番号】、【記載学名】、【記載和名】、【採取地名】、【採取日】、【採取者】、【タイプ報告論文名】の各項目が記録されている。検索にあたっては、「検索表」「標本リスト」から科名・属名・種名と分類学的な順を辿って探してもらうか、あるいはExcelファイル上で学名または和名などで「標本リスト」「シダタイプ標本リスト」に検索をかければ目的の標本を探し出すことが可能である。

森林植物学研究室所蔵の木材プレパラート約2万点は、農学部一号館地下1階30番標本室に5千点が、農学部三号館3階344番標本室に1万5千点が納められている。このうち30番標本室のものは科ごとにまとめられ、それぞれの科は、まず広葉樹・針葉樹に分けられ、さら・ノ科の学名のABCに並べられている。科内では属の学名のABC順に並べられ、分類学的な順序で目的の標本が検索可能である。木材プレパラートは、木材組織を3断面(木口面・板目面・柾目面)で切片にしたもの、あるいはmaceration(組織を酸や酵素で処理し、個々の組織・細胞を分離したもの)でA一般的な研究用・実習用の国産材・外材各種のプレパラートのほか、森林植物学研究室の教官・学生が自分の研究のため作った資料などであり、そのうちの農学部森林植物標本室の約5千点については利用することが便利なように分類学順に整理されている。



The mission of the Forest Botany Section is to collect and manage the scientific resources to enhance the researches on the forest science. Its collection consists of specimens of dried plants, seeds, wood materials, preparations of wood section, and dried fungi. To this collection, a code of TOFO is given among the international network of herbariums.

The highlight of this collection is the sixty thousand plant specimens, including many type specimens and other valuable species collected from Asia Pacific countries by Prof. T. Inokuma, who was the first professor of the Forest Botany, Department of Agriculture, the Imperial University of Tokyo. The wood blocks and preparations of wood section are made of the wood species from all over Japan and other Asia Pacific countries. These are also highly essential as the database of anatomical studies of woods.

At the present time, most of the plant specimens are held in the herbarium of the University Museum. Meanwhile, the herbarium of Department of Agriculture holds the wood blocks and other six thousand plant specimens, mostly of the coniferous trees and bamboo species including forty type specimens. Among them, seven hundred specimens of Chinese trees collected by Dr. E. H. Wilson are especially unique.

The herbarium of Laboratory of Forest Botany also holds forty thousand fern specimens and the preparations of wood section. The fern specimens were collected by Prof. S. Kurata, and include 328 type specimens and 183 holotypes which were named by himself. He also published the "Illustrated Important Forest Trees of Japan. vol.1-5" (1964-1976) as a basic information of Japanese tree species. The preparations consist of cross and vertical section, maceration (organisms soften or separated into constituent elements by acid orenzyme) and their micrographs.

As this collection is held in these three different herbariums, databases compiling informations are now under construction to letthis collection be more accessible. Currently, the database of fern specimen and preparations of wood section are available. The database of fern specimen includes the list of scientific name, Japanese name, date and place of collection and other basic informations for every specimen, along with the number of the shelf containing each of them. And, the preparations are separated into coniferous species andbroad-leaved species, then ordered alphabetically by their family andgenus names within each group. The database is constructed in the same manner for the convenience to search on them.




Fig.1



Fig.2


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