新規収蔵展

東京の昆虫たち

—その衰亡の歴史をたどる—

ビルが林立し,舗装道路で固められた東京に昆虫は少ない.だがかつてはそうではなかった.半世紀前の東京には雑木林がたくさんあり,そこにはカブトムシやクワガタが溢れるほどにいた.アゲハチョウやモンシロチョウなどの蝶もいたるところで見られたし,トンボもさまざまなものがいた.少年たちは夏になれば昆虫採集に熱中した.胸をときめかせて雑木林に行き,川でネットをふりまわしてヤンマを採った.昆虫の標本作りは夏休みの宿題の定番であった.

戦後の疲弊した時代を経て,経済復興が進むにつれて東京の町は整備され,雑木林や空地が減っていった.1964年の東京オリンピックは東京の街を大きく作り変えた.雑木林は次第に追いやられ,その前線は西へ北へと後退していった.昆虫少年もしだいに少なくなり,夏休みの宿題に昆虫標本を提出することもいつのまにかなくなっていった.

そのように見れば,昆虫は東京の変遷を示すすぐれた鏡ということができよう.須田コレクションはこの東京の昆虫の変遷を示すすぐれた資料である.須田孫七氏はおもに杉並区を拠点に,昭和20年代から現在にいたるまで継続的に東京の昆虫を採集してきた.それも人気のある蝶や甲虫だけでなく,バッタやセミ,ハチやアリにまで及ぶ幅広いグループをカバーしている.膨大なコレクションは10万点にのぼり,昨年本館に寄贈された.現在その整理と解析が進められており,今回の展示ではその成果の一部を公開した.

また須田コレクションに加えて,戦前の貴重な標本として五十嵐仁氏(元本学助手)の甲虫コレクションと,飯野徹雄本学理学部名誉教授が小学6年生のときの「昆虫観察記録」を併せて展示し,古い東京の昆虫を紹介することとした.






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