東京大学総合研究博物館

「骨〜かたちと機能を支えるシステム」

展示解説


サンゴ骨格

  1. 現生ハマサンゴ(鹿児島県喜界島荒木海岸で採取)
  2. 化石ハマサンゴ(化石年代6050年前、鹿児島県喜界島志戸桶で採取)
  3. ミドリイシ(枝状群体骨格)

サンゴ骨格年輪による過去の気候変動の高精度復元

 熱帯・亜熱帯の海岸を縁取るサンゴ礁は、造礁サンゴなどの石灰質骨格が積み重なってできたものである。造礁サンゴ類(宝石のサンゴとは近縁だが,違うグループのもの)は、イソギンチャクの仲間の動物だが、体内にぼう大な数の藻を共生させている。また、個体が分裂して数千・数万も集まって群体をなし、その下部に石灰質の骨格を作る。

 造礁サンゴ類の石灰質骨格は、枝状、被覆状、塊状など様々であるが、このうち塊状の骨格は木と同じように年1cm前後の幅の年輪を持ち、長いものでは500年以上生きる。骨格は炭酸カルシウムでできているから、その中に含まれる酸素や炭素の同位体比、微量元素などを解析することによって、水温・降水量などの記録を1ヶ月から1週間という高い時間分解能で復元することができる。

 現在生きているサンゴ骨格年輪の解析によって、過去数100年間の気候変動の記録をこうした高い時間分解能で復元することができる、さらに過去に生きていた化石サンゴの解析によって、数万年前の氷期や数10万年前の間氷期における数100年間の記録を、同様の分解能で明らかにすることができる。

地質試料の時間分解能としては、サンゴ年輪はもっとも優れており、熱帯・亜熱帯における気候モニタリングステーションといえる。サンゴ年輪の解析によって、数10年から数100年という長い時間スケールでの気候変動や、現在とは異なる条件下の気候変動を復元することができ、これによって、大気−海洋の気候モデルを改良し将来予測の精度を高めることができる。


●1998年に採取した生きていたサンゴの骨格

採取地点 : 鹿児島県喜界島荒木海岸(水深3m)
種類   : ハマサンゴ(Pories sp)
最も外側をおおっていたサンゴが、この骨格を作った。


●化石サンゴ

採取地点 : 鹿児島県喜界島志戸桶(標高4m)。地震隆起によって陸上にあがった離水サンゴ礁から採取した。    
化石年代 :6050年前(14C年代)
種類   : ハマサンゴ(Porites sp)


●ミドリイシ(Acropora)の太い枝状群体骨格

ハマサンゴとは異なり、明瞭な年輪は作らない。

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