魚類の骨格系の情報は解剖によるほかX線写真からも得ることができる。たとえば頭や顎(あご)などを構成するいくつかの骨、脊椎骨(せきついこつ)とそれに付属する骨、鰭(ひれ)とそれを支える骨などの情報である。特に、脊椎骨数や各鰭の条数(鰭すじの数)を数える場合や各鰭と脊椎骨との関係など骨と骨との位置関係を確かめるためには、X線写真は解剖よりむしろ優れている。またX線写真は、模式標本(学名を担う標本)やそのほか貴重な標本で解剖することのできないものの脊椎骨数などの内部形態を知るほとんど唯一の方法である。時には鰾(うきぶくろ)のような内蔵の形の情報も入手できる。
ここに展示したX線写真は、動物部門で行われた魚類の鰾の研究*で撮影されたものの一部である。この研究では、脊椎骨・肋骨(ろっこつ)・上肋骨(じょうろっこつ)・臀鰭(しりびれ)を支える骨などのほか、鰾の形や後方へ延びている状態の観察のためにX線写真を利用した。
*Tominaga, Y.,K. Sakamoto and K.Matsuura(1996). Posterior extension of the swimbladder in percoid fishes, with a literature survey of teleosts. University Museum, University of Tokyo, Bulletin No.36. 73 pp.
(富永義昭・坂本一男・松浦啓一(1996)。スズキ亜目魚類の鰾の後方への延長および真骨魚類における鰾の後方への延長に関する文献調査!)