東京大学総合研究博物館

「骨〜かたちと機能を支えるシステム」

展示解説


骨でできた薬

  1. 竜骨(リュウコツ、原料=大型哺乳動物の化石化した骨、用途=鎮静収斂、製剤=紫胡加竜牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯)
  2. 牡蛎(ボレイ、原料=カキの貝殻、用途=制酸、止渇、止汗、鎮静製剤=安中散、紫胡桂枝乾姜湯、紫胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯)
  3. 土別甲(ドベッコウ、原料=スッポンまたはシナスッポンの背甲、用途=解熱、解毒、強壮、方剤=延年半夏湯)
  4. 蝉退(センタイ、原料=スジアカクマゼミまたはその他近縁動物Qクマゼミ類の幼虫のぬけがら、用途=解熱、止痒、消炎、鎮痙、方剤=消風散)

 伝統ある東洋(漢方)医学で使われる医薬品(漢方薬)は主に草根木皮を原料とした植物性生薬を処方した方剤であるが、動物の構成成分や分泌物を原料とした動物生薬も数多く処方中に配剤されている。今回のテーマである「骨」にちなみ、動物の骨格となっている部分から作られた生薬ならびにその主な方剤を展示する。

 竜骨(リュウコツ)は大型哺乳動物の化石化した骨であり、現在用いられているものは中国大陸で産出したものである。牡蛎とともに「紫胡加竜骨牡蛎湯」、「桂枝加竜骨牡蛎湯」のような精神神経用薬とみなされる処方に配合されている。

 牡蛎(ボレイ)はカキ(イタボガキ科)の貝がらであり、主として炭酸カルシウムからなっている。

 土別甲(ドベッコウ)はスッポンまたはシナスッポン(スッポン科)の背甲であり「延年半夏湯」に配合され、慢性胃炎、胃痛、食欲不振などに用いる。

 蝉退(センタイ)はスジアカクマゼミまたはその近縁昆虫(クマゼミ類)の幼虫のぬけがらであり、「消風散」に配合され、止痒・消炎作用が期待されている。


●竜骨(リュウコツ, Longgu)

[基原] 大型哺乳動物の化石化した骨
[用途] 鎮静,収斂
[製剤] 紫胡加竜骨牡蛎湯, 桂枝加竜骨牡蛎湯


●牡蛎(ボレイ, Oyster Shell)

[基原] カキ(イタボガキ科)の貝がら
[用途] 制酸, 止渇, 止汗, 鎮静 
[製剤] 安中散 , 紫胡桂枝乾姜湯, 紫胡加竜骨牡蛎湯, 桂枝加竜骨牡蛎湯


●土別甲(ドベッコウ, Amydae Testudo)

[基原] スッポンまたはシナスッポン(スッポン科)の背甲 
[用途] 解熱, 解毒, 強壮
[方剤] 延年半夏湯


●蝉退(センタイ, Cicadae Periostracum)

[基原] スジアカクマゼミまたはその他近縁昆虫(クマゼミ類)の幼虫のぬけがら 
[用途] 解熱, 止痒, 消炎, 鎮痙
[方剤] 消風散

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