東京大学総合研究博物館

「骨〜かたちと機能を支えるシステム」

展示解説


骨でできた道具

  1. 縄文時代の骨角器(縄文時代後期〜晩期、福島県相馬郡新地町三貫地貝塚出土)
  2. アンデスの骨角器(先インカ各期、ペルー、カキ・コトシュ遺跡出土)

 ヒトは250万年以上も前に石器を作り始めたが、明瞭な骨器を作り始めたのはせいぜい数万年前のことである

 なぜ骨器の製作がそれほど遅れたのだろうか。

 その理由は技術の進展というよりも認知能力の進化という点から説明できる。一つは、初期人類は物質と食料の認知を別個におこなっていたらしいことである。
食料(動物の骨)を物質(道具の素材)としても理解すること、すなわち物質と食料の認知を連結することは初期人類の能力をこえていたらしいという見方である。第二には、固くて意図したとおりには割れにくい骨の加工には複雑な手順を要する点である。最終形状を念頭におき綿密な計画を作って作業を進めるには、やはり知的な進化が求められたであろう。

 骨器製作の開始が、ほぼ現生人類の出現時期にあたっていることは、こうした精神面の進化と無関係であったとは考えられない。ひとたび骨が道具の材料として利用され始めると、石では作れないような複雑な形状をもった作品が創造され、ヒトの道具文化はそれ以前よりもはるかに多彩なものになった。

↑ 戻る