東京大学総合研究博物館

「骨〜かたちと機能を支えるシステム」

展示解説


哺乳類の身体を支える骨(大腿骨の比較)

  1. ヒメネズミ
  2. キツネ(アカギツネ)国立科学博物館蔵
  3. タイワンジカ        〃
  4. バイソン          〃
  5. アジアゾウ         〃

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身体を支える骨

 骨は動物の身体を支える基本構造といえる。骨にもさまざまあるが、カニ甲羅のような外から支えるものを外骨格。哺乳類などの骨のように内側から支えるものを内骨格という。カメはその両方を備えた動物といえる。

 哺乳類の骨にもさまざまなものがあるが、基本的には柱となる細長い骨と、頭蓋骨を構成するプレートのような面的な骨とに分けられる。

 哺乳類は体重数グラムの小さな種から、シロナガスクジラのような150トンにもなるものまでいる。陸上哺乳類の中ではゾウが最大5トンもある。体重が重くなるとそれを支えるための骨も太くならなければならない。

 もし哺乳類の体型が相似形を保ったまま大きくなるとすると、骨も相似形を保ったままというわけにはゆかない。なぜなら体重は長さの3乗に比例するが、それを支える強度に対応する骨の断面積は長さの2乗に比例し、体重が重くなるにつれ負担が大きくなるからである。このことを解決するために大きい哺乳類ほど骨を太くしているらしい。

 陸上の大型哺乳類であるゾウやサイの脚ががっちりしており、バイソン、スイギュウなどになるとやや細くなり、ガゼルやシカになるとスラリと細くなるのはこのような理由による。

 ここに展示したのは比較的オーソドックスな体型をもち、地上を歩いたり走ったりするタイプの哺乳類の大腿骨である。これを見ると確かに大腿骨は相似形ではなく、大きい哺乳類ほど骨が太くなっていることがわかる。

 もちろん骨の形は体重だけでなく、同じ体重でも力のかかり方、つまり走りかたやジャンプのしかたなど運動によっても違う、またキリンのように高い木の葉を食べる、カンガルーのように後脚で立ってジャンプする、あるいはサルのように木に登ったり枝を渡ったりするなど、さまざまな生活上の必要性にも影響を受ける。このように骨の大きさや形にも生物の多様性の一面を見いだすことができる。

 

●ヒメネズミ Apodemus argenteus

 北海道、本州、九州の山地森林にすむ体重10ー25グラムの小型のネズミ。日本の固有種である。種子や昆虫を食べ、樹上をよく使う。細い枝でも器用に移動できる。交尾期は春と秋。1回に4頭ほどの子供を産む。標本は山梨県産のオス。近い仲間にアカネズミ(Apodenus speciosus)がいるが、アカネズミのほうは体重30ー50gでひとまわり大きく、より植物質に偏った食性を持つ。国立科学博物館蔵。


●キツネ(アカギツネ) Vulpes vulpes

 北半球に広く分布するキツネで、体重は5Kg前後。雑食性で野ネズミ類、鳥類、昆虫、果実など幅広い食性をもち、生息地も森林、草原、畑から人家近くまで柔軟性に富む。標本は群馬県産。国立科学博物館蔵。


●ニホンジカ(タイワンジカ) Cervsu nippon tuiouanus

 ニホンジカの台湾亜種。体重はオスが100Kg、メスが60Kgほど。現在、野生状態の本亜種は絶滅し、台湾南部の保護区で復活の試みが始まった。中国大陸でもほとんどが絶滅状態にある。一方、日本列島では数十年前には減少したが、最近は各地で回復し、場所によっては急増して農林業に被害を与えるようになった。標本は上野公園で誕生し25歳まで生きたオス。国立科学博物館。


●バイソン Bison bison

 北アメリカ大陸に分布する体重800Kgにもなる大型のウシ科の1種。草原にすむソウゲンバイソンとシンリンバイソンの2亜種がいる。19世紀の末には白人による大量殺戮のために絶滅寸前まで減少したが、かろうじて保護され、現在では保護区などで生き延びている。ヨーロッロッパバイソン(Bison bonasus)がいるが、野生状態のものは絶滅し、動物園にいた個体を保護区などに復活させる試みが進んでいる。全身骨格図は家畜牛のもので基本的にバイソンとよく似た構造をしている。標本はアメリカ合衆国ネブラスカ州産のバイソンの後脚。国立科学博物館蔵。


●アジアゾウ Elephas maximus

 南アジアから東南アジアにかけて分布する。地上最大の哺乳類であるアフリカゾウに次ぐ地上大型哺乳類で、体重は5トンにもなる。インドゾウ、セイロンゾウ、スマトラゾウ、マレーゾウの4亜種がいる。現在アジアゾウは5万頭ほどに減少し、しかも飼育されているものが多い。アジアゾウの分布する開発途上国では森林の破壊が進んでおり、その将来は明るくない。この骨は多摩動物公園で飼育されていたタカコ(推定43歳)の大腿骨。国立科学博物館蔵蔵。

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