東京大学総合研究博物館

「骨〜かたちと機能を支えるシステム」

展示解説


ヒトの骨格

  1. ヒト交連骨格・男女(模型)
  2. 幼児頭蓋骨(幕府直轄西洋医学所の旧蔵品)
  3. 細胞骨格(医学部細胞生物学・解剖学講座提供)
  4.              〃
  5. 急速凍結電子顕微鏡で明らかになった小腸吸収上皮細胞頂部の細胞骨格

●ヒト交連骨格

 私たちのからだの支柱をなす骨格は、骨に軟骨と靭帯が加わって構成される。全身の骨格は、成人では大小さまざまな形をした200個あまりの骨からつくられている。最大の骨は大腿骨で長さは40cm前後もあるが、最小の骨は中耳の3種の耳小骨で、その長さは5mmほどである。頭蓋骨・脊柱の骨・胸骨・肋骨・骨盤からなる体幹の骨格と、左右対称の上肢と下肢の骨格に区分される。個々の骨と骨は軟骨や靭帯で連結され、骨どうしがしっかりと組合わさった不動結合(頭蓋骨の縫合)と、肩関節、股関節や膝関節のように動きのある可動結合とに分類される。また、いくつかの骨が組合わさって頭蓋腔(脳)・脊柱管(脊髄)・胸腔(胸部内臓)・腹腔(腹部内臓)・骨盤腔(骨盤内臓)などの体腔を形成して、諸器官を保護している。このほか、骨格は筋肉との協調作用により、運動器官として重要な働きをもち、骨髄は血球をつくる造血器官である。


●小児頭蓋の分離骨

[IMAGE]頭蓋骨は、15種23個の骨が複雑に組み合わさって構成される。脳を保護するための強靭な脳頭蓋骨と、顔を形成する細かい顔面骨に区分される。小児では、個々の骨の間の連結が不完全で分離している。この標本は、オランダからもたらされたもので、江戸末期の幕府直轄の西洋医学所で、教育用標本として活用されたものである。



●細胞骨格

 細胞骨格とは細胞の中に存在する線維系の構造で、6nm(10-6mm)径のアクチン線維、10nm径の中間径線維、25nm径の管状の微小管が主な線維であり、これらに様々の関連蛋白ないし結合蛋白が結合して細胞の骨組み、運動、細胞内の物質輸送、細胞分裂、分泌等の重要な現象の中心的な役割を担っている。


●神経軸索の細胞骨格

 急速凍結電子顕微鏡法で観察した神経軸索の細胞骨格。
まわりに多くの10nm径の中間フィラメント(ニューロフィラメント)があり、その中に1本の微小管(25nm径)が存在する。微小管上には球状の膜小器官があり両者の間には25-30nm長の架橋構造が存在する。この架橋構造が微小管のレールの上を、膜小器官を1.5〜0.5μm/秒の速さで輸送するモーター分子である。なおニューロフィラメントはお互い同志の間に短い架橋構造を持ち軸索の柔らかくダイナミックな骨組みとなっている。


●神経軸索の細胞骨格

 神経軸索の細胞骨格。微小管と膜小器官(ミトコンドリア)の間には短くて小さい頭部をもつモーター分子による架橋構造がみられる。ミトコンドリアも微小管上を約0.5μm/秒の速さで輸送される。


●小腸吸収上皮細胞頂部の細胞骨格

 急速凍結電子顕微鏡法で明らかになった小腸吸収上皮細胞頂部の細胞骨格。
吸収上皮細胞頂部には多数の微繊毛(Microvilli)と呼ばれる指状の突起が密集しておりここで消化吸収が行われる。微繊毛内にはアクチンフィラメント(6nm径)の束が針棒として存在しそれは根のように細胞質に伸び出している。その下にはケラチンからなる中間径フィラメント(10nm)のゆるい網目がみられる。アクチンの根の間にはフォドリンやミオシンからなる細く短い架橋構造があり、全体として上皮細胞の骨組みとなっている。

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