第2部 展示解説 動物界 坂本 一男
はじめに 現在、魚類は、一般に水中で生活する変温動物で 主として鰓で呼吸し、四肢をもたず、鰭をもっ脊椎動物に対する総称である ( 上野 ,1975) 。 最古の化石は古生代カンブリア紀の前期 ( 約 5億 5000万年前) の地層から発見されている (Shu et al ., 1999) 。その後の長い地史学的時間を通じて著しく分化し、地球上のあらゆる水圏に進出した魚類は、形態・生態など様々な面で著しい多様性を示す ( 岩井 ,1985; Nelson 1994;Helfman et al., 1997) 。 ○ 『Systema Naturae』10th ed.(1758) と現在の分類体系 国際動物命名規約 (2000) はリンネの『自然の体系』. 第10版 (1758) の出版日、 1758 年 1 月 1 日を動物命名の起点としている。リンネは、魚類を動物界の 6網のうちの一つ、魚網 Pisces として分類した。リンネは魚綱を主腹鰭の位置によって5つの目 Apodes(7属)、 Jugulares(6属) 、 Thoracici(17属) 、 Abdominales(13属)、 Branchiostegi(8属) に分類した。彼が扱ったのは 51属に属する 378 種である( 図 1) 。ただし、それぞれヤツメウナギ科の 1 属、メガネカスベ属、ツノザメ属、キアンコウ属とチョウザメ属に該当する 5属、 Petromyuzon, Raja、Squalus、Chimaera、Lophius、Acipenser は、両生綱の 1目、 Nantes目に分類されているので、 56 属に属する 418種の魚類は 6 つの目に分類されていることになる。 リンネの「自然の体系」 (1758) 以降、今日まで夥しい数の種が記載され、現生種の総数は約 25000 にのぼる (Nelson,1994) 。これは全脊椎動物の 50%以上に相当する。これらの魚類は、現在、 57目 (481 科約 4258属に分類されている (Nelson,1994; 上野・坂本 ,1999)。 現在も毎年のように数多くの新種が報告されており、 Nelson (1994) は最終的には現生種は 28500 種になると推定している。
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