第2部 展示解説/鉱物界

REGNUM LAPIDEUM

鉱物の色の多様性
〜化学元素がつかさどる色

 

色とは何か

 まず、なぜ色がついてみえるのか考えてみよう。
 色を感じるためには、①光と②物体と③目が必要である。

 「光」という単語を見たとき、多くの人は目にみえる光(可視光を) をイメージするが、実際はもっと 幅の広いものである。 光は電磁波の一種であり、電磁波はその波長によって、日焼けの原因となる 紫外線やレントゲン検査でなじみ深いX線、電子レンジに使われているマイクロ波などに分けられてい る(図 4 一千々岩英彰「色彩学概説」より)。

 その中で、私たちの目が感じ取れるのは波長 380nm〜780nm 付近までの光で、その光を可視光と呼んでいる。そのうち、例えば 650〜780nm の光は 私たちの目には赤色に見え、520nm 付近の光は緑色に見える(図5)。ちなみにnm( ナノメートル) は長さを表す単位で、 lnm は 100 万分の lmm である。

 太陽光や蛍光灯の光は白い光に見えるが、その中には 380〜780nm のすべての光、すなわち赤、青、 黄、緑といったすべての色が含まれている。それを証明してみるには、例えば太陽光を三角プリズ ムに通すと、白色光を虹の七色に分散させることができる(図6)。

 つまり、絵の具やクレヨンでは、 多くの色を重ねるほど濁って黒っぽくなっていくが、光の場合は様々な色が重なり合わさるほど、 白く明るくなっていくということである(図7) 。

 ある物質に白色光が入射すると、光の一部は物質に吸収され、残りは透過したり反射したりして物質 の外に出ていく。このとき、例えば物質によって黄色い波長をすべて吸収されると、物質の外には白 色光から黄色い波長を除いた光が出て行くので、私たちの目には黄色以外の波長を重ね合わせた色= 青色に見える。物質によって、入射した白色光の特定の波長が吸収されることを、「選択的吸収」と呼 ぶ。私たちが知覚する、いわゆる色−赤、青といった有彩色−−は、白色光から選択的吸収された分 を引いた残りの光(残存色)なのである。特定の波長の選り好み(選択的吸収)をせず、物質が白色光を 100% 吸収すれば、われわれの目には黒色に見え、80% の吸収であれば濃灰色、20% であれば薄灰色、 0% であればそのままの白色に見える。選択的吸収ではなく、光の吸収量に左右される明るさの違い (明度)による色は無彩色と呼ばれる。

 「色」の日本工業規格(JIS)による定義は、①有彩色成分と無彩色成分との組み合わせからなる視知覚の属性。この属性は、黄、オレンジ、赤、ピンク、緑、青、紫などの有彩色名、もしくは白、灰、黒な どの無彩色名を、明るい、暗いなどで修飾したもの、またはこれらの色名の組み合わせで記述される ②三刺激値のように、算出手法が規定された3個の数値による色刺激の表示、である。

 この定義によれば、色とは、色相(赤、青などのいわゆる「色」) 、明度(光の反射率のこと。光の吸 収が少ないほど明るい色になる)、彩度(色の鮮やかさ。彩度が全くないのが無彩色)の三要素によって 語ることができるものといえる(図 8−−マンセルの色表より)。

 

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