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ライデン大学から東京大学に寄贈された植物標本

Specimens donated to the University Museum, the University of Tokyo, from the Nationaal Herbarium Nederland

清水晶子・加藤僖重・大場秀章
Akiko Shimizu, Nobushige, Kato and Hideaki Ohba

日蘭修好400年を記念して,ライデン大学国立植物学博物館からシーボルトとその後継者らの植物標本コレクションの一部が寄贈された.当初,150点程度の申し出であったが,現在までその点数は447点に達している.

寄贈された標本の多くは元ハスカルが個人で所有していた標本である.ハスカル(Justus Carl Hasskarl)は1811年に現在のドイツ,カッセルに生まれ,1894年にクリーヴで亡くなったドイツの植物学者であるが,その半生をオランダの東インド植民地のジャワで過ごした.当時,オランダ領東インドを中心とした熱帯アジアの植物分類についての第一人者であった.彼がジャワに滞在していた頃,シーボルトは日本を離れオランダに帰国している.

ハスカルがシーボルトらのコレクションを収蔵していた経緯の詳細は明らかではないが,おそらくシーボルトらの日本植物コレクションの整理を進める過程で,ミクェルが送ったものと推定される.ハスカルの没後,この標本は再びライデンに戻ってきた.ハスカルは標本ラベルに克明に諸情報を書き入れている.シーボルトらの標本をよく研究したものと考えられる.東京大学のシーボルト・コレクションの特色はハスカル旧蔵標本を多数含むことにあるといってよい.

また,フローニンゲン大学の植物標本室に収蔵されていた標本も同標本室の閉鎖後,ライデンに戻されたが,その一部も東京大学に寄贈された.

現在までに寄贈された全標本を表1に示した.「ラベル上の学名」には,ラベルに記されている学名と命名者名をほぼそのままのかたちで示した.なお,ラベル上の学名は,その後の分類学の研究によって正しいとは認められなくなったものも多い.「採集者」はラベルに記されているものもあるが,一部は標本の作り方などから推定したものもある.「標本番号」は東京大学総合研究博物館植物標本室(略号TI)におけるシーボルト・コレクションの登録番号である.なお,標本には台紙ごとに異なる番号をつけてある.標本画像は総合研究博物館のホーム・ページ(http://www.um.u-tokyo.ac.jp)で閲覧することができる.

しみず・あきこ 東京大学総合研究博物館客員研究員
かとう・のぶしげ 獨協大学外国語学部言語文化学科教授
おおば・ひであき 東京大学総合研究博物館教授
(Akiko SHIMIZU: Research Fellow,
University Museum, University of Tokyo;
Nobushige KATO: Professor, Dokkyo University;
Hideaki OHBA: Professor, University Museum,
University of Tokyo)
 

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