デジタルミュージアムを支える技術
基礎技術

データ入力技術

− 越塚 登 −


データ入力技術はデジタルミュージアムの全ての面で重要な技術である。学術資料を保存する場合であっても、修復や検索、さらには展示をする場合であっても、あらゆるデジタルミュージアムの活動では、そもそもデジタルコンテンツの存在が不可欠である。従って、入力の品質や効率がデジタルミュージアム全体の品質や効率に大きな影響を与える。

データ入力の方法や技術は、その入力データのデータ形式に応じて、様々なものが存在する。まず、文字データの入力である。これは、純粋に人手でタイピングする方法、一旦画像入力をした後、文字認識処理によって文字データに変換する方法とがある。

第二は、静止画像である。これには、資料をデジタルスキャナで直接デジタル入力する方法と、一旦光学的撮影をした後、フィルムから入力する方法がある。前者では、スキャンする資料の特性と必要なスキャン精度に応じて、ドラムスキャナ、フラットベッドスキャナ(図1)、オーバーヘッドスキャナ(図2)などを使い分ける。後者はフィルム専用のスキャナを利用する。


図1 フラットベッドスキャナ


図2 オーバーヘッドスキャナ



第三は動画である。これにも、MPEG2等のデジタルエンコーダを通して直接デジタル動画を入力する方式と、一旦映画フィルムやビデオテープに撮影した後そのフィルムをスキャンしたりビデオ画像をキャプチャする方式がある。

第四は立体データである。これには、立体を立体形状データとして入力する方式(図3)と、立体物の全周画像を入力する疑似立体データ方式とがある。

こうした、データ入力技術に共通して重要な観点には精度、効率、資料への影響がある。入力の精度は高い方が良いが、多くの場合入力効率と資料への影響とのトレードオフ関係がある。例えば、高い解像度で画像入力しようとすれば、それだけ入力時間がかかる。また精度良く入力するためには、資料に何らかの加工、処理を加えなければならないこともある。例えば、写真をとるためには照明を当てなければならないし、書物をスキャンするためには、ページの見開きをしっかりと広げなければならない。こうした処理は時には資料を傷めることもある。


図3 立体スキャナ