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[かわら版の情報社会]


新吉原の怪談(仮)安政四年(一八五七)

安政四年(一八五七)に新吉原での怪事件のかわら版であるが、肝心な後半部分がなく、実体は不明。遊廓に不思議なことが起こるという噂に、三人の男が試しに登楼する。その夜、遊女が盛んに袖を引くので、男は、これは気があるのかと思った、という所で次葉に続くため、あとのことは想像にお任せするしかない。

新吉原の怪談(仮)

図38

新吉原の怪談(仮)

干時安政四巳年
五月なかごろ新吉
岡([ママ])■■■■([虫喰])とかやよなよな
ふしぎあることたひたひ
なりといへども昔うハさ
咄シにききし箱根より
ほかニようかいハなしといへども
ここニふしきのことあり
たひたひ害ありといへども
とちうにてかへるものあればうた
がう人ありてある夜
三人にてあがりけるに
わかいものこの三人をもてなし
やりてしんぞうまでもよろこび
客ニそのままあかりぬそれより
酒肴もちろん芸者をあげそれより
三人とも床いりしところへ女むやミと
そでをしきけれバきやくハまこと
になりこれさそこお([ママ])はなし■
([虫喰])しろ以下欠

 

山猫退治(仮)

猪狩の最中に狼も捕え、さらに体は虎、顔は狐、尾は七尾、竜虎のごとき山猫が現れ、これおも捕えたという武勇伝。なおこの山猫は数千年行きながらえたものというおまけ付き。

図39

山猫退治(仮)

扨又ここに大番頭鍋島様此時
小山ことき猪しし一疋飛来り是を
自から手取ニ被遊まことに昔富士ノ
裾野ニ仁田忠常もかくやと計の
御高名也次ニ近藤登之助様世ニも
めづらしき大かみ一疋手おいに
相なり欠来り是を片手ながらに
いけ取たり此時はるか北之方より
土煙りを欠たて数万之勢子を
なやませ乍飛来る毛物有
是をつくづく見るにからだハ虎
ごとく面ハ狐のごとく尾ハ七ツさけて
すさまじき勢イニて欠爪を立て
たち木をたおし其有様龍虎ノ
あれたることく是則チ数千年へたる
山猫成るべし是を三浦之助様
御両人ニて打取真事に前代ミもん也
此時数多高名手柄有之候へ共
余ハ略ス萬代ふえき目出たかりケる
御狩なり

 

百面相人形(仮)

両国回向院で催された百面相人形(生人形であろうか)のうち花魁の人形は非常に出来が良かった。この人形のあたりから夜八ツ時頃より人の声や、酒盛りのような賑やかな声がするので、番人がのぞくと、稲荷神と人形が酒盛りをしていたという。このような内容から、おそらく、興行を盛況にするための話題造りのかわら版ではないかと思われる。

図40

百面相人形(仮)

両国回向院ニおいて
百面相人形の内おい
らんの義ハ上なる生方
御覧ニ入候所此度夜八ツ時頃より
人声並酒もりのていものにぎ
わひ候ニ付番人のものうかがひ
見候ところうがうがと申こゑ
あいきこへ右ニ付うかハいなり様
の事に候間いなり乃社をま
つり申候ふしぎの事に
御座候以上


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