ロゴ

[第一部 デジタルテクノロジー]

ビデオオンデマンド


総合研究博物館VODターミナル
VODターミナル 指で触れることによりビデオ映像が選択できる。 数百チャンネルのビデオ映像を収められるサーバーと繋がっている。

総合研究博物館VODターミナル
対話型テレビサービスのひとつで要求に応じてビデオを配信する。つまり利用者が希望するビデオ番組を希望する時間に即時に視聴出来るサービス。コンピュータ技術の発達によりビデオ映像をデジタル情報として扱えるようになった1990年代になってから技術的には可能になった。地域で数千人以上のユーザーにサービスを提供する大規模なシステムと博物館や図書館などで100人以下にサービスを提供する小規模なシステムに分けられる。大規模なシステムは電話会社やCATV会社が実用化を目指して実験を続けている。一方小規模なシステムは新世代のビデオライブラリとして各地の博物館などに導入されつつある。これまでのビデオライブラリは同時にアクセスする人数分のVTRを用意して、ロボットや人手によりテープを交換していた。機械系が多く場所を食う、画質が時と共に劣化する、テープの交換のための時間がかかる、メンテナンスに手間がかかるなどの欠点があった。

ビデオオンデマンドシステムを構成する要素としてビデオサーバー、通信網、受信端末がある。ビデオサーバーは数多くの要求に同時に答えてデジタルビデオ映像をリアルタイムに配信する。また必要に応じて一般のVTRに見られる早送り再生、逆転再生のような特殊再生機能を備える必要がある。デジタルビデオ映像はビデオ映像符号化の国際規格であるMPEG(Moving Pictures Expert Group)1またはMPEG2で符号化されるのが一般的で現行テレビの画質ではMPEG2で6Mbit/s、高品位テレビの画質を求める場合はMPEG2で30Mbit/s程度の帯域幅が必要とされる。ビデオサーバーのビデオ映像蓄積用の記憶装置は価格と性能のバランスから磁気ディスクが主に使われている。

磁気ディスク装置は複数組み合わせてアクセス性能ならびに信頼性を向上させたRAID(Reduntant Arrays of Inexpensive Disk)構成をとるのが一般的である。さらに同時アクセスが多い場合には半導体メモリが、大量のビデオ映像を保存しておく場合には磁気テープ装置も利用され、磁気ディスク装置と共に記憶階層を構成する。市場に現れたDVD(Digital Video DiskまたはDigital Versatile Disk)も書き込みが容易になれば記憶装置として利用するシステムが増えていくと思われる。

ビデオ映像を配信するために、幹線網では同時アクセス分の帯域幅を持つ広帯域通信網が必要となるため、広域網ではCATV網や光ファイバー網、あるいは既存の電話線に広帯域のデジタル信号を多重化するADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)などのxDSL技術が、構内ではCATV網やATM(Asynchronous Transfer Mode) LANが利用される。現行テレビの品質で同時に10人がアクセスする場合では60Mbit/s、同時に100人では600Mbit/sの帯域が保証されていなければならない計算になる。受信端末は送られてきたデジタル映像をMPEGデコーダによりアナログ映像信号に戻してテレビ受像機に送る。CATV網を利用する場合いったん、アナログ信号に戻してから配信する方法もあるが、デジタル情報のまま配信したほうが帯域を効率的に利用出来る。また受信端末は利用者が希望するビデオ映像に対する要求を通信網の上り回線などを利用してビデオサーバーに送る機能も持つ。一方ビデオサーバー側ではできるだけ遅れなく受信端末からの要求に応えることが求められる。

(坂村 健)

アドレス:/DM_CD/DM_TECH/VOD/HOME.HTM

ビデオオンデマンド用記憶装置
記憶装置1Mバイトあたりの価格(ドル)同時ストリーム数映画1本蓄積コスト(ドル)
半導体メモリ10.0020010000
磁気ディスク0.505500
光ディスク0.202200
磁気テープ0.01110


前のページへ 目次へ 次のページへ