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「新」(汐)(挿図8、9)「新」(飯)(挿図10)
挿図8は縦・横の比率が異なっていることから、他の二つと違った刻印であることは比紙的わかりやすい。挿図9と10では書体も同じであり、大きさもほぼ等しく、偏も全く同じといってよいほどである。しかし、旁の第一画と第四画では、挿図9に比べて10の方が長めに作られていることから違う印による刻印であることがわかった。実物資料の観察だけではなかなか気が付かないことでも、このような観察方法をとると違いがはっきり現れる。
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「清水」(汐)(挿図11)「清水」(飯)(挿図12)
結果を先に述べると、この二つの資料はまったく別の遺跡から出土した陶器につけられた刻印であるが、同じ印による押捺のおこなわれた可能性の高い作品でる。いずれも碗の底部、高台の内側に付けられていて、その位置も同じような所が選ばれている。OHP用紙にコピーした文字を重ねあわせて比較をしたが、違いを見つけることはできなかった。挿図11の資料でははじめに押した刻印から僅かに右にずらして再び押捺をおこなったため、二重の刻印になっている。二つの刻印ともども、「水」の最終画を止めているところに印判面の角が押されていて、この印の判面が角形をしていたのを知ることができた。以上の特徴を総合してみると、同じ印が使われただけでなく、同じ作者による製品であることも考えられよう。
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「高木」(汐)(挿図13)「高木」(飯)(挿図14)
この二つの刻印も、同一印によると思われる例である。隅丸長方形の枠の中に、てん書体の文字で彫刻された刻印。押捺されている場所も底部の中央という共通点を持っている。挿図14は下端の一部が欠けているものの、「清水」の場合と同様にOHP用紙にコピーして比較してみると、きれいに重なることが確認できた。特に「高」字の第一画が枠の線に接する部分、「口」部の上から右にかけての線の形、下半部の、特に右側の線の形などにとりわけ共通した特徴を持っている。このような点を合わせて、この二つの刻印は同一の印が使用されていると判断した。この判断を正しいとすれば、挿図14の刻印では「口」部や外枠の一部に欠けたところが認められることから、文字の欠けが全くない挿図13の刻印よりも後に押捺されたとすることができる。この二つの作品に関して言えば、汐留遺跡出土の陶器より飯田町遺跡の陶器の方が後から作られたとすることができる。
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