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クランツ 鉱物標本
はじめに
標本台帳の概要
 現在、総合研究博物館に残されている当時の標本台帳の一冊は、背表紙に
「CATALOGUE OF GEOLOGICAL, PALAEONTOLOGICAL, LITHOLOGICAL AND MINERALOGICAL SPECIMENS. Geological Institute.」
と記された1881年から1884年に出版された8種類の台帳の合本で印刷物である。
その内訳は、
1. Catalogue of Lithological Species. Scientific Museum, Department of Science, University of Tokio. 1884. 外国産岩石標本1652点。
2. Catalogue of Specimens of Historical Geology. Scientific Museum, Department of Science, University of Tokio. 1882. 古生代、中生代、新生代の化石標本それぞれ1102点、1341点、1069点。
3. Catalogue of Palaeontological Specimens. Middle Case. Department of Science, Tokio-Daigaku. 1881. 化石標本1210点。
4. Catalogue of (A) Collection of Minerals. Department of Science, University of Tokio. 1882. 外国産鉱物標本3132点。
5. Catalogue of (B) Collection of Minerals. Department of Science, University of Tokio. 1882. 外国産鉱物標本615点。
6. Catalogue of (C) Collection of Minerals. Department of Science, Tokio-Daigaku. 1881. 外国産鉱物標本100点。
7. Catalogue of Minerals Illustrating Physical Properties. Scientific Museum, Department of Science, University of Tokio. 1882. 外国産鉱物標本751点。
8. Catalogue of the Japanese Minerals. Department of Science, Tokio-Daigaku. 1881. 日本産鉱物標本503点。
であり、計11475点(そのうち10972点が外国標本)の台帳である。
 クランツ標本は鉱物だけでなく、上に示したように化石・岩石等もある。鉱物のカタログの内で4.のCatalogue of (A) Collection of Minerals. Department of Science, University of Tokio. 1882のみが革の背表紙をもつ手書きの標本台帳として残されている。手書きの標本台帳は、クランツ鉱物標本に付随して残されているオリジナルのラベルを忠実に書き取ったものである。
 標本台帳は標本番号、標本名、産地、取り扱い会社より構成されている。標本番号は、東京大学で付けられた連番とクランツのオリジナルラベルに付けられている番号からなっている。標本名は、ドイツ語、英語、フランス語で併記されており、それぞれの鉱物名の後に当時の著名な鉱物学者の名が書かれている。例えばドイツ語であればWerner、フランス語であればHauy、英語であればJamesonなどである。これは、その鉱物名が鉱物学者によって認知されていることを示すもので、当時の習慣であったようである。産地もドイツ語表記の他に英語表記が添えられている。最後に、標本を取り扱った業者名が記されているが、大部分がKrantz社であるが、その他にもEger社の名前が散見される。標本自身に添付されているラベルにはGregory社も多くある。非常に興味深いのは、標本に「東京開成学校」のラベルを持つものがあるが、その大部分がGregory社のラベルを持つ。いずれにせよ、全ての標本が総合研究博物館では「クランツ標本」として一括りに扱われてきた。
 クランツ社は1833年にFreibergにAdam August Kramtzによって設立され、その後Berlin、Bonnと移転して現在に至っている。標本ラベルにもA. Krantz in Berlin、A. Krantz in Bonn、Dr. A. Krantz in Bonn、Dr F. Krantz in Bonnなどの種類がある。A. KrantzがBerlinnからBonnに移り、そこで博士号を取得したことや、後継者であるFriedrich Krantzの時代の標本であるなど、ラベルのもつ情報も興味深い。
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