小さいもの
人聞は望遠鏡を発明した。それにより可視的な世界は飛躍的に拡大し、宇宙のはるか彼方にある天体さえ観察できるようになった。十六世紀オランタの眼鏡商ヤンセン父子の発明した顕微鏡の意義もまたそれに劣つてはいない。机に載るほどの大きさの光学器械からもたらされる微小世界のヴィジョンは、人間の思考ばかりか世界観にさえ大きな 変化をもたらした。十七世紀の英国の実験化学者ロパートフックは、顕微鏡を通して微小世界の様々な貌 を眺め、その観察結果を「ミクログラフィア」なる書物に纏めている。そこに附されたノミの全身拡大図は驚 異に満ちており、著者によれば「小さな生き物の力強さ と美しさは人間とおよそかけ離れている」 。これこそ、われわれが主題に掲げた「ミクロ ( コスモ ) グラフィア」 に微小世界が必要であることの理由である。
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