あいさつ

 

このたび東京大学総合研究博物館と朝日新聞社は、小石川分館開館1周年を記念して待別展
「MICROCOSMO - GRAPHIA -- マークダイオンの『驚異の部屋』」を開催する運びとなりました。

近年、欧米では美術家とミュージアムが協同し、従来にない仮設展示を実現するという大掛かりなプロジェクトが各地で試みられています。1961年米国に生まれ、 ニューヨークを中心に活動する美術家マーク・ダイオンは、国際的な舞台での活躍 を通じ、そうした実験的な協同制作の先駆者の一人と目されています。活動地域は 地球規模の広がりを有しており、アマゾン等の熱帯雨林、南北ヨーロツパの古山系 、ローマのヴィラ・メディチ等の歴史的遺構、ヴェネツィアの運河、ロンドンのテ ムズ川など、世界各地の社会歴史的・ 自然生態的な特異点に自ら赴き、人類学、考古学、 動物学、植物 学などの科学的フィールド・ハンティングを擬似的に実践し、史料、 標本、ゴミなど採集した様々な自然物・人工物・捏造物をもって、虚実の入り混じった小宇宙を構成してみせるというユニークな方法は、 古典的な博物学の方法を倣びつつ現代美術の協同制作につなげるという、 知性的にして戦略的、劇場的にして遊戯的なその性格のゆえに、幅広い一般公衆と美術批評家の共感を呼んでいます。

今回は、東京大学を探査フィールドとし、学生・院生・社会人からなる 「博物館工学ゼミ」(西野嘉章主宰)との協同のもとで、学内各所から様々な学術標本、学術廃棄物、生活ゴミが大量に集められ、それら変化に富む 「モノ」の集積によってダマオン版「驚異の部屋」が、国指定重要文化財 である小石川分館の空間に仮設展示されることになりました。この機会に、 美術家ダイオンと大学博物館の協同実験成果を公開することは、「アート & サイエンス」の境界領域に注意を喚起する試みとして時宣に適うことと考えます。

本展は社会貢献プログラムと積極的に取り組んできたフィリップモリス株式会社とキュレーターの飯田高誉氏とが、「エコロジーとアート」というテーマ のもとでマーク・ダマオンの展覧会開催の計画 を立案したことに端を発します。東京大学総合研究博物館と朝日新聞社は、この企画の先見性に注目し、美術家ダイオンの仕事を日本で初めて 本格的に紹介するプロジェクトを実現させることとなりました。美術家を中心 に、博物館、新聞社、支援企業、キユレータ ーが各々の役割を引き受け、展覧会実現に向けて意欲的に関わることができた点において有意義なプロジェクトであると存じます。

最後になりましたが、本展の開催にあたり、ご協力いただいた各位に厚く御礼申し上げます。

2002年 12月 主催者

 


本特別展はフィリップモリス株式会社の支援によって実現されました。

 

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