クランツ標本は、明治初頭から、東京大学の前身である開成学校・東京開成学校における教育研究を推進するために導入された、いわば東京大学最古の標本群である。総点数1万2千点にも及ぶ鉱物・岩石・化石標本は、当時の教育研究そのものであった。研究教育を支援する標本一つ備えていなかった開成学校で学んでいた俊秀にとって、これらの標本群は、まさに干天の慈雨であったことは想像するに難くない。当時の学生は、書籍を参照しながら板紙を用いて鉱物結晶の模型を作成し、初めて結晶形態の全体像を見ることができた有り様であったという。このような環境下で、手にした鉱物・岩石・化石の標本は、彼らに決定的な影響を与えたに違いない。 今回、東京大学総合研究博物館の誇るクランツ鉱物・化石標本を常設展「第十四回東京大学コレクション展」として開催し、現在でも生き生きと活躍の場を与えられているこれらの標本の中に、これからも新しい学問を生み出し続ける博物資源の息づかいを感じ取っていただきたい。 本展示開催にあたって、ご協力下さったクランツ商会はじめ関係者、学内関係部局に、この場を借りて感謝申し上げる。
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