24 国家に管理されるコピー権





 切手もまた国家が複製権を握っているという点においてはお札と同様である。切手の使用が支障を来さないのは、その複製が公権力の健全な管理の下にあるからである。したがって、通常なら切手の偽造は紙幣のそれと同様に犯罪として処罰される。しかし、ある特殊な史的経緯のもとでは、異例の事態が起こらないでもない。第二次世界大戦中に合衆国政府はナチス・ドイツの経済撹乱を狙ってフェイク切手を偽造し、それを敵国内に流布させようとしたし、また朝鮮民主主義人民共和国は1957年頃外貨獲得のため、輸出用に初期切手の官製模造(プリント)の製造を行っている。


24-1 偽造切手の貼られた郵便物
紙にタイプ印字、縦9.1、横16.1、タイ製、1975年頃、内藤コレクション

 郵便使用を目的とした偽造切手の使用例。このように偽造切手が実際に使用された例は数が少ない。ために、マニアの垂涎の的となる。とならば、偽造切手を使って偽造郵便物そのものを捏造して、一儲け企もうとする者がいても不思議はない。


24-2 「ドイツ切手」二点
紙に印刷、第三帝国製、第二次世界大戦中、内藤コレクション

24-3 「ドイツ切手」二点(偽造)
紙に印刷、アメリカ製、第二次世界大戦中、内藤コレクション


24-4 朝鮮民主主義人民共和国初期切手
紙に印刷、朝鮮民主主義人民共和国製、1950年、内藤コレクション

24-5 朝鮮民主主義人民共和国初期切手四点(官製複製)
紙に印刷、朝鮮民主主義人民共和国製、1957年頃、内藤コレクション



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