2 「贋作」は「真作」を超えられない?





 他人を欺くために複製される美術品を「贋作」と呼ぶ。贋作造りには様々な手段が用いられるが、オリジナルをそのまま同寸で模倣するケースはそう多くない。仮に二点の揃う機会でもあれば、どちらかが贋作であるとの疑いが生じるからである。真贋を見極める最良の手段は、疑いのある二点を並べ、それぞれを比較しつつ吟味することである。普通であれば贋作を見破るのはそう難しくない。真作を忠実に模倣しようとして、贋作者の筆は躊躇いがちとなり勢いを失うからである。しかし、このケースのように二作が並んで陳列される機会は滅多にないし、また贋作者の技量が優れていればいるほど、真贋の見極めはそれだけ難しくなる。

2-1 富岡鉄齋『空谷君子図』(真作)
掛軸、絹本着色、縦121.2、横49.1、明治20年代、清荒神清澄寺蔵

2-2 富岡鉄齋『空谷君子図』(贋作)
掛軸、絹本着色、縦120.2、横48.8、明治20年代、清荒神清澄寺蔵



前頁へ   |   表紙に戻る   |   次頁へ