III パエストゥムの葬祭絵画


パエストゥムの様々なネクロポリス(主にアンドゥリウオーロ墓地)の墓室型、また特にカッソーネ型の墓から出土する彩色装飾石板は、今日ではすべてパエストゥム考古学博物館に収蔵されており、その一部が公開展示されている。墓からは多くの場合、陶器を主とする盗掘をまぬがれた副葬品も発見されたが、これらの出土品の大部分は、A.PontrandolfoとA.Rouveret両教授による集大成的な著作“Le tombe dipinte di Paestum—パエストゥムの彩色装飾墓(Modena 1992;以下省略記号TDP)”に公表された。本展ではさまざまな墓室絵画をカラー写真(数例を除き原寸大)で公開し、1基の墓に関しては完全な再現立体展示を試みた。


45  第123(“タランド”)墓—スピナッツォ墓地:
    Fig.126-130    Pl.55

スピナッツォ墓地には、ヘレニズム初期の質的に優れた大画像式葬祭絵画で装飾された墓が集中したが、この墓室墓はその中では最も年代の下る例証のひとつである。これらの墓で呈示されるイコノグラフィーは、パエストゥムの新興貴族層によってもたらされた新しい表現と言えよう。
奥壁:ふたりの男性による“dextrarum iunctio—冥界に到着した故人を握手で迎える”情景;その他の壁面:男、女、馬、またマルチーズ犬が連なる行列図。
前3世紀初頭;墓の大きさ:長さ3.11m;幅2.76m;高さ2.56m;A.Pontrandolfo,Dialoghi di Archeologia—Nuova Serie 1,1983,n.2,P.114ff.

Fig.126 パエストゥム:スピナッツォ墓地:第123墓:奥壁
Paestum,Tomba 123-Spinazzo:Rü ckwand


Fig.127 パエストゥム:スピナッツォ墓地:第123墓:前壁右側と左壁左側
Eingangswand rechts und linke Wand links


Fig.128 パエストゥム:スピナッツォ墓地:第123墓:左壁右側と奥壁左側
Linke Wand rechts und Rü ckwand links


Fig.129 パエストゥム:スピナッツォ墓地:第123墓:前壁左側と右壁右側
Eingangswand links und rechte Wand rechts


Fig.130 パエストゥム:スピナッツォ墓地:第123墓:右壁左側と奥壁右側
Rechte Wand links und Rü ckwand rechts



46  第47墓—アンドゥリウオーロ墓地:      Fig.131-132
女性が葬られたカッソーネ型の墓である。
長い方の両側面:植物文モチーフ(柘榴の花と枝葉);短い方の側面(西側):プロテシスの情景(天蓋の下の寝台に安置された死者);(東側):嘆き悲しむ女、供物、生賛の動物による葬列;(東側破風部分):“deductio ad inferos—冥界への旅”の情景(有翼の魔神の舟に迎え入れられた故人)。
前350年頃;墓の大きさ:長さ1.93m;幅0.95m;高さ1.43m;TDPpp.122ff.,326ff.

Fig.131 パエストゥム:アンドゥリウオーロ墓地:第47墓:長い方の側面(南側)
Paestum,Tomba 47-Andriudo:Sü dliche Langseite


Fig.132 パエストゥム:アンドゥリウオーロ墓地:第47墓:短い方の側面(西側)
Westliche Schmalseite



47  第86墓—アンドゥリウオーロ墓地:      Fig.133-135
男性が葬られた大型のカッソーネ型もしくは半墓室型の墓である。
長い方の両側面:有翼のニケの乗る2頭立て戦車各1台;短い方の側面(東側):ラバに挽かれる車の描出された—恐らく彼岸への旅を象徴する—風景;(西側):“戦士の帰還”の情景(戦利品を携え凱旋する馬上の戦士が葉冠を持つ婦人から歓迎されている)。
前340/330年頃;墓の大きさ:長さ1.95m:幅1.405m;高さ1.90m;TDPpp.160ff.,339f.

Fig.133 パエストゥム:アンドゥリウオーロ墓地:第86墓:短い方の側面(西側部分)
Paestum,Tomba 86 Andriuolo:Detail der westlichen Schmalseite


Fig.134 パエストゥム:アンドゥリウオーロ墓地:第86墓:長い方の側面(南側部分)
Detail der sü dlichen Langseite


Fig.135 パエストゥム:アンドゥリウオーロ墓地:第86墓:長い方の側面(南側部分)
Detail der sü dlichen Langseite



48  第58墓—アンドゥリウオーロ墓地:      Fig.136-137
女性が葬られたカッソーネ型の墓である。
長い方の側面(南側):猛獣と架空の動物による動物格闘図;(北側):決闘にのぞむ武装した人物ふたり、スフィンクス、嘆き悲しむ女;短い方の側面)(東側):プロテシス(遣体安置場面と女性の象徴付随物);(西側):馬に跨る重装の戦士、装飾された大型の聖杯型クラテール。
前340年頃;墓の大きさ:長さ2.27m;幅O.98m;高さ1.46m;TDPpp.149ff.,336f.

Fig.136 パエストゥム:アンドゥリウオーロ墓地:第58墓:短い方の側面(東側)
Paestum,Tomba 58-Andriuolo:Ostliche Schmalseite
Fig.137 パエストゥム:アンドゥリウオーロ墓地:第58墓:長い方の側面(南側)
Südliche Langseite



49  第12墓—アンドゥリゥオーロ墓地:      Fig.138
男性が葬られたカッソーネ型の墓である。
短い方の側面(東側):“戦士の帰還”の情景(戦利品を携えルカーニア民族衣装を着けた馬上の戦士がオイノコエとパテーラを持つ婦人から歓迎されている)。
前4世紀第2四半期;墓の大きさ:長さ2.04m;幅0.98m;高さ1.18m;TDPpp.98ff.,314ff.

Fig.138 パエストゥム:アンドゥリウオーロ墓地:第12墓:短い方の側面(東側)
Paestum,Tomba 12-Andriuolo:Ostliche Schmalseite



50  第53墓—アンドゥリウオーロ墓地:      Fig.139
女性の葬られたカッソーネ型の墓である。
長い方の側面(南側):2頭立て馬車競争(部分)。
前350/340年頃;墓の大きさ:長さ2.09m;幅O.95m:高さ1.30m;TDPpp.137ff.,331ff.

Fig.139 パエストゥム:アンドゥリウオーロ墓地:第53墓:長い方の側面(南側)
Paestum,Tomba 53-Andriuolo:Südliche Langseite



51  第X墓—ラゲット墓地:      Fig.140
女性の葬られたカッソーネ型の墓である。
長い方の側面(北側):2台の2頭立て馬車による競争、中央にイオニア式円柱;短い方の側面(東側):婦人のいる家庭の情景。
前4世紀中葉;墓の大きさ:長さ2.20m;幅0.99m;高さ1.46m;TDPpp.210ff.,356f.

Fig.140 パエストゥム:ラゲット墓地:第X墓:長い方の側面(北側)
Paestum,Tomba X-Laghetto:Nordliche Langseite



52  第4墓—アンドゥリウオーロ墓地(1971年出土):      Fig.141    Pl.56
男性の葬られたカッソーネ型の墓である。
短い方の側面(東側):ふたりの重装の戦士による決闘の情景(部分)。
前4世紀第4四半期;墓の大きさ:長さ2.02m;幅O.99m:高さ1.37m;TDPpp.196ff.,350f.

Fig.141 パエストゥム:アンドゥリウオーロ墓地(1971):
第4墓:短い方の側面(東側)
Paestum,Tomba 4-Andriuolo 1971:
Ostliche Schmalseite



53  第7墓—ガウド墓地(1972年出土):      Fig.142
カッソーネ型の墓である。
長い方の側面(北側):武器を持ち決闘にいどむふたりの有髭でほとんど裸の戦士。
前4世紀第2四半期;墓の大きさ:長さ1.90m;幅O-88m;高さ1.37m;TDPpp.251ff.,377.

Fig.142 パエストゥム:ガウド墓地(1972):第7墓:長い方の側面(北側部分)
Paestum,Tomba 7-Gaudo 1972:Detail der nordlichen Langseite



54  第24墓—アンドゥリウオーロ墓地(1971年出土):      Fig.143
女性の葬られたカッソーネ型の墓である。
拳闘図(部分):拳闘士ふたり(肌がひとりは白く、もうひとりは黒い)、長い衣装の有髭のフルート奏者、イオニァ式円柱。
前370/360年頃;墓の大きさ:長さ1.36m:幅0.74m;高さ1.10m;TDPpp.188ff.,348f.

Fig.143 パエストゥム:アンドゥリウオーロ墓地(1971):第24墓:長い方の側面(西側部分)
Paestum,Tomba24-Andriuolo 1971:Detail der westlichen Langsejte



55  第4墓—ヴァンヌッロ墓地:      Fig.144
男性の葬られたカッソーネ型の墓である。
長い方の側面(北側):長い衣装の有髭のフルート奏者と裸の拳闘士ふたり(部分)。
前4世紀中葉;墓の大きさ:長さ1.96m;幅0.92m;高さ0.94m;TDPpp.284ff.,396f.

Fig.144 パエストゥム:ヴァンヌッロ墓地:第4墓:長い方の側面(北側部分)
Paestum,Tomba 4-Vannullo:Detail der nordlichen Langseite



56  第11墓—コントゥラーダ・ヴェッキア・ディ・アグローポリ墓地(1967年出土):      Fig.145
男女複数が埋葬された墓室墓である。
短い方の側面(北側):“戦士の帰還”の情景。
前360/350年頃;墓の大きさ:長さ2.83m;幅;2.13m;高さ2.20m;TDPpp.246ff.,372ff.

Fig.145 パエストゥム:コントゥラーダ・ヴェッキア・ディ・アグローポリ墓地
(1967)、第11墓:奥壁
Paestum,Tomba 11-Contrada Vecchia di Agropoli 1967:Rückwand



57  第2墓—盗掘者からの強制差押さえ物件:      Fig.146
恐らく女性が葬られたカッソーネ型の墓である。
長い方の側面:プロテシス(大型画像で描かれた女性の遺体安置図)、フルート奏者、ふたりの女。
前4世紀第3四半期;墓の大きさ:長さ2.06m;幅O.96m;高さ1.29m;TDPpp.299ff.,402

Fig.146 パエストゥム:第2墓(強制差押さえ物件):長い方の1側面(部分)
Paestum,Tomba 2-Sequestro Finanza:Detail einer Langseite