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[新聞錦絵の情報社会]


東京日日新聞 第四十号

(団十郎の写真を西洋人が所望)
当時のトップスターである九代目団十郎に感嘆した西洋人が、写真をもらったお礼に巻きタバコをあげて帰ったという話。歌舞伎役者と西洋人に写真という取り合わせが新しい時代を感じさせる。

東京日々新聞 第四十号

九代目団十郎の技芸に/長じ看客を/して感せしむ/るハ今に始めぬ/事ながら既に歌舞妓/十八番と聞えし勧進帳ハ実夫白猿老が/工夫に因て成り西川扇蔵杵屋六翁等之を/補助し始めて木挽町河原崎座に於て興行せし/以降八世三升も之を勤め今の三升も勤る事再度なり既に/明治五壬申の年春市村座に於て之を興行為せし時一洋人之を/見物為し三升が技芸に長ずること且弁慶が忠臣富樫が義気/あるを感服し事終つて後三升が部屋に/来り洋人しきりに賞美し足下/弁慶お上手写真頂戴とありけるにぞ/やがて鏡台の引出しより/写真を出して与へければ/洋人謝礼の意なりけん/巻烟草数本を与へて/去りたり又栄誉と/いふべきのみ

弄月亭綾彦記

東京日々新聞 第四十号
図141

郵便報知新聞 第五百七十一号

東京大学法学部附属明治新聞雑誌文庫蔵
(遊び代を踏み倒した外国人)
長崎外国人寄留地の外国人を相手にした私娼が、代金を払わなかった客の落とし物である金時計を代わりにせしめたところ、領事館に訴えられ窃盗罪になったという話。絵は娼婦を足蹴にする外国人の理不尽な振る舞いを描いている。

郵便報知新聞 第五百七十一号

所替れば品かはる東京にての引張ハ長崎/にて縮緬にて昔ハかかる業を羞頭巾まぶ/かく被りしよりよもや此等の事ハあらじ/と一名ブラックよもやと呼做す一個のブラックよもや長崎な/る外国居留地あたり黄昏過て彳めバ/何れの国の人なりけん云寄しかバ傍なる/恠しの家に誘ひ入雲夢巫山の事済て/価も与へず逃去たり跡にブラックよもやハ腹立しく/火影にあたりを見廻たるに金時計の落し/あれバ是幸と持帰る然に彼外人ハ/明白には云ずして領事館に失ひし由訴へ/けれバ賎婦は窃盗の科に落懲役に処/せられしとぞいかに外国人なればとて金がハ/時計持人が箇様な行状ハあるまじと/思ふブラックよもやの油断ならん

郵便報知新聞 第五百七十一号
図142


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