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A-project

吉松秀樹/アーキプロ


A-project1993 Model photo + C.G.A-project1993 SketchA-project 1993 Model photo + C.G.
A-project 1993 Model photo + C.G. A-project 1993 Sketch A-project 1993 Model photo + C.G.
アーティスト・イン・レジデンスを主体とする芸術振興プログラムにおいて、将来計画の策定や運営ソフトの蓄積のために計画された仮設的なパイロット施設である。郊外ニュータウンの一角に敷地が設定されていたため、周辺の環境を損なわずローコストで豊かな制作空間をアーティストに提供すること、そしてアーティスト・イン・レジデンスというあまり一般的でないプログラムを普及させる新しい拠点となることが要求された。施設は5室のアーティストのためのスタジオと運営事務所のスペースで構成されている。

スタジオは、7.5m×15mの平面を持ち、2層吹抜けの内部制作スペースとほほ同じ大きさの外部制作スペースからなり、基本的に一人のアーティストが使用する。おのおのの制作スペースには、上部からの視点を確保するためにバルコニーが設けられており、立体的に空間を使用することが可能となっている。また、外部制作スペースには制作に必要な設備諸室があり、屋内外からの使用が可能である。

おのおののユニットは空間的に互い違いに組み合わされ、アーティスト同士の関係をより希薄にするように構成されているが、ユニット間を隔てている搬出入に使われる大開口のシャッターを開けることにより、連続したスペースの使用や、より開放的な制作スペースの確保が可能となっている。これらの構成により、内部と外部が入り雑じった空間をつくり出し、建築の形態が主張することなく空間が主張するような、新しい美術施設の在り方を模索しようとしている。数色に塗り分けられた施設の外観は、見る方向により次々と表情を変えていくことによって施設としてのアピールを行うことを考えたものである。これは、固定した建築のイメージを都市に与えないことを試みたものでもある。

「連統体」・CONTINUUMについて

「連統体」(CONTINUUM)と呼んでいる考え方の最初期の計画が、「A-project」である。

「A-project」では空間を連統させることに主題を置き、それらと知覚のメカニズムとの関係性を模索した。その出発点は、システムによって空間がつくられていくことに対する興味である。それは本来私的な表出である「建築」にどういった未来があるのかを考えた結果であり、自分自身が持っている建築的規範をそぎ落とす方法を自問した結果でもある。

「連統体」のモデルには、2つの意味が込められている。1つは、より少ないパラメータにより空間を決定していく探求である。それはある1点を押すと他のポイントが連動して変形していくようなモデリングのあり方であり、外的要因や内的要求によってモデルが変形し収束していくことに対応できるゴム膜のような建築モデルの考え方でもある。もう1つは、幾何に還元することによって意味性を希薄とさせながらも、連続体となるようにモデリングしていくことによって「建築」としての記号性を確保しようとする考え方である。これは、都市や自然の中に埋没することが望ましいと思われる環境において、視認性と消去性という背反する要求を正確に記述したいとする思いでもある。

A-project1993 Concept sketch
A-project 1993 Concept sketch
具体的な作業としては、主に面積的要求からつくられるヴォリュームの組み合わせのシミュレーションを行い、条件にもっとも合致すると思われる空間モデルを選択し、それを基本モデルとしてモデリングの作業を間始する。モデリングの作業は、主に立方体の組み合わせからなる基本モデルを押したり引っ張ったりする変形のシミユレーションである。モデルの数値化に関しては、ポイントの数値が連動して決定されていくような設定を行い、与えなければならないパラメータを極力減らしていくようにトライ&エラーを繰り返している。現在の連続体モデルは平面の組み合わせによってつくられているため、3点が決まれば同一平面上の他の点は決定されていく。したがって、平面が連続していくと与えなければならないポイント数は減少していくこととなる。

A-projectに続いていくつかの連続体計画案がある。

K-house

密集した住宅地に建つ写真家のための住宅である。二つの個室と屋内外の作業スペースを持つオープンスペースが要求された。ここでは日影のシミュレーションにより建設可能なヴォリュームがほぼ決定されてしまうような地域において、「連統体」の考え方がどのように「変形」し、「収束」されていくのかを試みている。

結果的にほぼすべてのスペースは、パースペクティヴが強調された空間となり、平面的ではなく立体的かつ意識的な距離の生成が行われた。

G-cottage

コテージのプロトタイプの計画である。65m2の床面積内で、二つの個室を持ち、最大8名の宿泊が可能な空間が要求された。ここでは集団規定がまったくない環境において、モデリングのシミュレーションにおけるパラメータをいかにして減らしていくことが可能であるかを探っている。

基本モデルに線分の始点と終点を一致させるとによって連続体モデルをつくり出すというシステムを与え、それによって決められていくポイントのみによって空間をつくりあげる面を決定すべく、内的要求を鑑みながらシミュレーションを行った。

GY-project

大規模保養基地に温泉を利用した保養施設を新設し、施設内の新しい核として機能させる計画である。温泉施設とビアレストランの2つの機能が要求された。それらの機能の内、プライベートな機能部分を分離し連続体としてモデリングしている。環境に埋没させることが望ましいと思われる環境において、視認性と消去性という背反する要求を施設の形状として正確に記述することを目的とした。

K-house1994 Model photo + C.G. G-cottage1994 Model photo + C.G. GY-project1994 Model photo + C.G.
K-house 1994 Model photo + C.G. G-cottage 1994 Model photo + C.G. GY-project 1994 Model photo + C.G.


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