あいさつ
現在、東京大学の総合研究資料館及び学内各部局には、総点数にして400万点を超える学術資料が分蔵されています。この膨大な資料群は、明治10年の本学創立以来、医学、工学、文学、理学、農学等の各分野で、教育研究活動の進展と軌を一にして蓄積されてきた貴重な歴史的・文化的な財産であります。
こうした学有財を広く一般の益に供して欲しいという声は、久しい以前より、学内外の等しく唱和するところとなっていました。そのため当館では、恒常的な業務としての常設展示に加え、これまで数度にわたる特別展示を通して、そうした要請に可能な限り応えるべく努力して参りました。
しかし、東京大学のコレクションはまことに多様にして膨大です。そのため、コレクションの全貌を掴むことはおろか、個々の物品について、その所在をつきとめ得ぬものや、台帳の記載さえ満足になされておらぬものなども数多く見受けられます。こうした現状を憂うる当館では、広く公有に値する貴重な学有財のシステマティックな登録を進めるとともに、それらの公開を継続的な事業として行ってゆくことになりました。
今回は、東京大学コレクション公開事業の第1回目として、本学の諸部局に分蔵されている東アジア関連資料のなかから、美術文化財として学術的に価値の高いもの48点を精選し、特別展示「東京大学コレクション(I)—東アジアの形態世界」を構成することになりました。教育研究用の学術資料として収集されたものであるため、材質も、出自も、時代も、技術も様々ではありますが、そうした多様性のなかに東アジアの民が編み出した形態の面白さを味わって頂けたら幸いです。
最後に、この特別展示図録を作成するにあたり、ご協力頂きました学内外の関係者の方々に心より謝意を表します。
1994年10月
総合研究資料館特別展示実行委員会
図録執筆者(五十音順) 池田温(創価大学文学部教授) 磯前順一(東京大学文学部助手) 伊藤大輔(東京大学文学部) 犬木努(東京国立博物館考古課) 今村啓爾(東京大学文学部教授) 大塚達朗(東京大学文学部助手) 倉林眞砂斗(城西国際大学講師) 小泉恵英(東京国立博物館東洋課) 鮫島和大(東京大学埋蔵文化財調査室) 漆紅(東京大学文学部) 信祐爾(東京国立博物館学芸部企画課普及室長) 田口榮一(東京芸術大学美術学部教授) 谷豊信(東京国立博物館東洋課) 西田泰民(財団法人古代学協会研究員) 平隆郎(東京大学東洋文化研究所助教授) 松丸道雄(東京大学東洋文化研究所教授) 矢島律子(町田市立博物館学芸員) 山下祐二(明治学院大学文学部助教授) 総合研究資料館特別展示実行委員会 委員長 青柳正規(文学部教授・資料館長・古典考古学) 委員 今村啓爾(文学部教授・考古学) 藤井恵介(工学部助教授・建築史) 松谷敏雄(東洋文化研究所教授・考古美術) 赤澤威(資料館専任教授・先史人類) 大場秀章(資料館専任助教授・植物) 西野嘉章(資料館専任助教授・美術史)