資料の調査と概要
本空中写真が入っていた段ボールは、地理標本資料室の地図ケースの上に古くから置かれていたものである。それとは別に、2021年と2023年に受け入れた故佐藤久理学部名誉教授のコレクションの中にも中国域の空中写真が相当量含まれているが、経緯の異なる別の資料である。
本資料は、ある程度のまとまりごとにクラフト紙で巻かれており、2012年に行った最初の調査では、巻かれた束ごとのタイトル(地域名など)や資料点数などの確認を行った。
図 空中写真に記載された情報
本格的な内容の調査は2023年になってから、写真そのものに書かれている情報(①撮影者・操縦者 ②撮影日 ③地域名 ④縮尺 など)やサイズなどの調査とともに、撮影やスキャニング、撮影位置の特定などを行った。個々の資料は連続した複数の写真を1枚の台紙に貼り付けたものが多いが、台紙上には操縦者や撮影者として~軍曹、~中尉のように階級が書かれている場合があり、旧日本軍による撮影であることがわかる。
撮影等のデジタル化はすべて自前で行ったが、サイズが長辺29~311cmと相当ばらつきがあったため、大きなものは三脚を用いた俯瞰撮影、比較的小さなものはスキャニングにより行った。撮影位置の特定は、資料の画像とGoogleEarthを目視で比較することで行い、位置が特定できたものについては中心付近(写真が複数枚のときは全体の中ほど)の緯度・経度を記録した。
収蔵されている空中写真の概要を以下の表に示す。その中には、満州事変後(1931.12-1932.2)の旧満州ハルビンの写真や、1939.6の上海、太平洋戦争勃発以後(1942.5)の雲南省、1944.4-5の広東省の写真などが含まれている。
撮影年 | 撮影者等 | 場所 | 点数 |
---|---|---|---|
1931.12-1932.2 | 操.多久島軍曹 偵.安在大尉 | 旧満州ハルピン方面 | 6 |
― | ― | 旧満州ハルピン方面 | 2 |
1937.8 | 天津栗山部隊 | 位置不明 | 1 |
1938.12 | 操.奥村操縦士 撮.伊藤曹長 | 陝西省・山西省 潼關 | 1 |
1939.6 | ― | 上海市西南部 | 4 |
1942.5 | 鈴木隊 | 雲南省 龍陵附近ほか | 15 |
1944.4-5 | P.大塚軍曹 O.黒川中尉 | 広東省(中西部) | 15 |
― | ― | 甘粛省,湖南省ほか | 46 |
― | ― | 位置不明 | 45~ |
合計 135点以上 |
また、位置の特定ができたものを以下に示す。
図 位置特定済みの旧日本軍撮影中国域空中写真(Google Earth画像)
理学系研究科 栗栖 晋二